書評のようなもの

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横溝正史『黒猫亭事件』を分析してみた

昭和22年3月20日深夜、東京近郊の武蔵野の面影が多分に残るG町。G坂派出所詰めの長谷川巡査が、巡廻中に酒場「黒猫」の裏庭で地面を掘り返している若い僧・日兆を目撃する。その様子に不審を抱いた巡査は日兆を詰問すると同時に、穿たれた穴の中に女の腐乱死体を発見した。死体の顔は識別不能なまでに損壊しており、身許の判定は覚束ない。現場である「黒猫」の経営者夫妻・糸...
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横溝正史『車井戸はなぜ軋る』を分析してみた

『本陣殺人事件』と同様、これも十数年ぶりの読破。改めて読むと、こんなに味わい深い作品だったのかと思い知らされました。あるいは単に、自分が年令を重ねたせいなのか。いずれにせよ、これは隠れた名作です。 初出は、1949年(昭和24年)の『読物春秋』1月増刊号。この時点では金田一耕助モノではありませんでしたが、1955年(昭和30年)の単行本化の際に金田一...
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横溝正史『本陣殺人事件』を分析してみた

初読は中学生の頃。角川文庫版の表紙──黒猫と女の子(鈴子?)の顔が上下に重なっているやつ──と、表紙裏の梗概に〈初夜の褥を鮮血に染めて斃れ伏す新郎と新妻……〉とか何とか書かれていたのを覚えています。ちなみに、黒猫&女の子の表紙はkindole版も同じでした。 久しぶりにしっかり読み込んでみて、改めて横溝翁の意気込みが行間に溢れている作品だと感じました...
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横溝正史『女の決闘』を読んだ

その昔、中央公論新社の『婦人公論』に連載されたという短編。女性誌ということもあってか、複雑怪奇なトリックや残虐無比な悪人、凄惨極まりない死体は出てきません。『女の決闘』という、やや猛々しいタイトルでありながら、人情味のある登場人物が多い作品です。 あらすじ 東京・緑ヶ丘住まいの英国人であるロビンソン夫妻は、諸事情で日本を離れるにあたり、交流のあった緑...
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横溝正史『支那扇の女』を読んだ

幾度かにわたって形を変え、現在……といっても1960年出版時の姿に落ち着いた作品。もともとは『ペルシャ猫を抱く女』という短編でした。これも昔、読んだことがあります。女性をモデルとした絵画と華族令制定の時期が事件の鍵になる点は同じ。 あらすじ 昭和32年8月20日の早朝、パトロール中の成城署の木村巡査は、小田急線の陸橋から飛び降り自殺を図った若い女を取...
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横溝正史『トランプ台上の首』を読んだ

初出は『オール讀物』昭和32年1月号。その後、昭和34年2月に中編化された金田一耕助ものです。角川文庫版では前記事の『鴉』と同じく『幽霊座』に収録されています。 あらすじ 隅田川の水上惣菜屋・宇野宇之助が、河岸に建つアパート聚楽荘に住むストリッパー・牧野アケミの生首を発見する。しかし見つかったのは首だけで、胴体は部屋のどこにも残されていなかった。勤め...
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横溝正史『鴉』を読んだ

『オール讀物』昭和26年7月号に掲載された短編推理小説。角川文庫版(kindle版も)では『幽霊座』に収録されています。 あらすじ 金田一耕助は静養のために岡山県を訪れ、旧知である岡山県警の磯川警部に誘われるまま、“山にとりかこまれた猫の額ほどの一寒村”にある湯治場にやって来た。かつては〈お彦さま〉を祀る神社のご利益で栄えた湯治場だったが、今は見...
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横溝正史『幽霊座』を読んだ

初出は『面白倶楽部』という雑誌。昭和27年(1952年)11月号と12月号に掲載された中編小説です。 横溝翁が芝居、特に歌舞伎に造詣が深いことはよく知られていますが、意外にも歌舞伎の世界を取り上げた作品は本作の他にはありません。角川文庫版『幽霊座』の解説で大坪直行氏が述べられているように、一般受けしないと思われたんでしょうか。ただ大坪氏は同じ解説で「...
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『人形佐七捕物帳 巻三』を読んだ

巻一、巻二……と読み進めて、順序どおりの巻三。以下の5作品が収録されています。 万歳かぞえ唄神隠しばやり吉様まいるお俊ざんげ比丘尼宿 全体としては、横溝作品特有のおどろおどろしさは控えめで、ユーモラスな描写や爽やかな結末が印象的です。 次ページはネタバレです!
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横溝正史『吸血蛾』を読んだ

10数年ぶりに横溝正史先生の未読長編を読了しました。 ここのところ京極夏彦氏の辞書的分厚さの大長編(1000ページ超え)に立て続けに取り組んでいたせいで、小説の長さに関する感覚が完全に麻痺しています。 kindle版なので当初は総ページ数がわからなかったのですが、文庫版で調べてみて300ページを超えているということなので、長編に分類されるべき作...
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