日中講和成立

太平洋戦記
1941年1月第8ターン
  • 第3次日中和平交渉
  • 日中不戦条約締結

中国領内の全根拠地制圧を受けて、最後の講和会議が開催されます。

1937年7月の盧溝橋事件から数えて3年半にわたる日中戦争が、ここにめでたく終結しました。

判で押したように「洛陽以西かつ遵義以北を除く全中国領土の割譲を要求」し続けてきましたが、これは我が国が貴重な鉄を費して敷設中の大陸縦貫鉄道(?~南寧)を、当面使い続けていくための措置。

対英蘭戦および対米戦開始後、敵潜水艦の脅威に怯えながらの海上輸送は避けて、南方資源をガンガン陸送したいのです。条件3であれば、華北・華中で産出する鉄鉱石も無償で手に入るし。

ちなみに、中国側が条件4を承諾することはゲームシステム的にもないようです。

ゲーム世界からもう少しリアリティのレベルを上げて架空世界をシミュレートすると、どういう状況になっているのか。

日本としては、「先輩流血の地」である満州の権益が保証される限りにおいては、中国と戦うべき理由は本来ないのである。

『真・大東亜戦争』より

そこで

未だ国際的に「満州国」として承認されていない実状を踏まえ、中国が形式的な宗主権を持つ自治領とし、「五族協和」の理念だけは守ることとした。蒋介石には、「無血で満州を奪還した」と宣伝させてポイントを稼がせてやり、日本としては、名を捨てて実を取ろう、というのである。

これまで繰り返してきた「満州国承認」の要求を撤回する見返りは、万里の長城の北側、錦州から張家口を結ぶ線に、非武装地帯を設けることと、駐留している日本軍に関しては、若干の兵力削減に留めること、軍と鉄道に関する権益は日本側のものとすることだった。『真・大東亜戦争』より

満州における日本の権益の問題で、いくつかは継続協議ということになったが、大筋で、日中は再び戦火を交えない、との合意が成立した。

中国共産党は、この講和を欺瞞である、とし「満州奪回、祖国統一」のスローガンのもと、抗日戦争を継続する、と宣言した。つまり、満州の日本軍は、共産ゲリラの脅威からは解放されないわけである。ただ、日中の全面戦争という事態を考えれば、その脅威もさしたるものではない。

『真・大東亜戦争』より

あと、チチハル油田(おそらく大慶油田)の採掘権は当面独占したいところですな。

このあたりの丁々発止ですが、『図説・満州帝国』によると

関東軍は当初、満州全土を占領して軍政をしく予定だった。これに強く反対したのが参謀本部で、清朝の廃帝・溥儀を首長とする親日政権を樹立すべきだと主張した。それは陸軍省も了解済みの「満蒙問題解決方策大綱」の線に沿っており、第一段階で親日政権の樹立、第二段階で独立国家の樹立、第三段階で領有(日本に併合)する、というものであった。

ただ、日本政府や陸軍中央部は独立国家案に反対した。“日本の意のままになる親日政権”ならば国政世論の非難をかわせるが、独立国家では難しいとみていた。親日政権なら国民政府の宗主権を認めており、中国そのものを否定したことにならないという理屈である。

(リットン)報告書は日本が恐れていたように、日本軍の武力行使が自衛のためでなく侵略行為であり、不戦条約(パリ条約)に違反し、中国の主権を侵していることを繰り返し指摘した。そして、満州国が住民の自発的な運動によるものとは認められないとし、日本軍が匪賊と称しているものも、大部分が祖国防衛のための行動であると認定した。

しかし結論部分では、単なる原状回復ではなく日中間に新しい条約を締結させ、満州における日本の本来の権益を確保させることや、満州には中国の主権の範囲内で広範な自治を認める自治政府をつくり、その政府に日本人を含む外国人顧問を任命する方向で解決をはかるべきだと勧告した。

『図説・満州帝国』より

ということで、『真・大東亜戦争』における講和条件はそれなりに根拠のある内容と言えるようです。

国士気取りの対中強硬派や侵略欲・支配欲に目が眩んだ陸軍の青年将校あたりが何やらわめき散らしそうだけど、目の前のエサに飛びつくしか能のない近視眼的で視野狭窄のアホどもは、予備役編入でさようなら。

【合本版】真・大東亜戦争
アドレナライズ
あまりにも荒唐無稽な仮説・設定・描写に一気に興醒めして序盤で挫折する架空戦記が多い中、全18巻を一気呵成に読破できた稀有なる大作。シリアスかつデリケートなテーマを扱いながらもウィットに富む文体。十二分にリアリティを保ちながら、驚天動地の軍事作戦や謀略が展開され、英知を結集した新兵器が敵軍を蹴散らす……傑作です。

中国サイドの主要人物はどういう状態だったのか、妄想してみました。

蒋介石

重慶→昆明→大理と退きつつ抗日戦を指導してきたが、大理失陥(=中国の全拠点喪失)で去就は?
いかなる根拠に基づくものかスターリンは蒋介石を高く評価しており、それを踏まえてソ連に亡命政権を樹立する構想もあったそうだが、ここでは気力と体力のすべてを使い果たし、半ば廃人化してしまったという設定で、そのまま第一線から退いてもらうことにする。まだ老け込む年齢ではない(当時、満54歳)けどね。
生島治郎著『総統奪取』では、独断専行ながらカリスマ性をもち、なかなかに魅力的な人物として描かれていた。夫人の宋美齢に泣き言を垂れるシーンの描写もGood!
後継者は、蒋の片腕とも称された何応欽か。

汪兆銘

蒋介石との関係はおそらく「覆水盆に返らず」。ただ蒋は引退したことにするので、国民党の内部で復権の余地はあるかも。何応欽とは国民党の両巨頭として、波風立てないようにやってもらえるか?

毛沢東

この頃の毛沢東は、まだ頭脳明晰で戦略眼が冴えわたっていたことであろう。今後しばらくは、ソ連の支援をバックに満州や華北での抗日ゲリラ活動に従事するといったところか。
ただ国民党の支配体制が確立して治安が安定していく過程で、共産党に対する締め付けは強化されるであろうから、いずれ根拠地・延安から追われることになるかも。
長征の再現じゃないが、辺境の地を流浪する過程でストレスも蓄積され、そのうち加齢も手伝って、毛沢東の暴走が始まるのではなかろうか。連合赤軍による山岳ベース事件の拡大版みたいな内紛が起きるかも。その場合、やはり林彪や劉少奇や彭徳懐が犠牲者になるのだろうか。

周恩来

仮想世界での中国がまともな国家になるか否かの鍵を握っているのは、この人ではなかろうか。
史実でも周恩来は、西安事件で蒋介石と張学良の仲介をして国共合作を成立させた立役者だったし、日中戦争中は共産党の代表として国民政府の臨時首都・重慶に駐在し、蒋介石との抗日統一戦線の維持に努めたというキーパーソンであった。
ここでは日中講和成立後、毛沢東との路線の違いから共産党を離れ、国民党の何応欽や汪兆銘と合流したという設定にしたい。できれば若き日の胡耀邦も一緒に。周恩来や胡耀邦といった人格者が、失脚することなく国の舵取りを行えていたら、中国の民主化は現実とは比べものにならないほど進み、チベットやウイグルも苛烈な弾圧を受けることなく、日中関係もそこそこ良好なままに推移して、アジアの平和と安定は(朝鮮半島を除いて)盤石なものになっていただろうに。残念でならぬ。

妄想はそのくらいにして、日中講和後の当面の仕事は、インドシナ半島への兵力移動島嶼部防衛態勢の整備です。

(C)GENERAL SUPPORT

コメント

タイトルとURLをコピーしました