横溝正史『霧の山荘』を読んだ

書評のようなもの

初出は『面白倶楽部』昭和33年11月号に掲載された『霧の別荘』。のちに中編化されたのが本作とのことです。

K高原(おそらく軽井沢)の別荘地帯を舞台とした事件で、冒頭のシーンにいきなり“霧”が出てきます。その場面が印象的なのですが、欲を言えば、最後に霧の中で犯人逮捕!として、霧で始まり霧に終わるというのが味わい深かったかと……。

評価

世界観:4点

地方を舞台とした作品。自分の好みの問題だが、東京モノよりも作品世界に入り込める。

ストーリー:4点

前述のように、オープニングは金田一が霧の中を彷徨するシーン。さまよい歩く間、そこに至った経緯の説明が入る。映像としても効果的。タイトルが『霧の山荘』だし。時間にしてわずか2日間の物語だが、場面が小気味よく変化して物語に引き込まれる。
それにしても、磯川警部といい等々力警部といい、金田一と行動を共にすると何かしら事件に巻き込まれて、せっかくの休暇や静養がふいになってしまいますな。

人物造形:3点

紅葉照子の一風変わった人物像が、文面から伝わってくる。奇矯な行動をとる映画女優って、他の作品にも登場した記憶が……。作品名は思い出せない。
対照的に姉の房子、ミッションスクールの舎監さながらの女と形容される。
本筋とは関係ないが、横溝翁の短編『死仮面』にも学校経営者の「川島」という一族が登場する。横溝翁のイメージでは「川島」姓=教育者となるのか。

サスペンス:4点

サスペンス性を意図的に強調している箇所がある。所轄署の岡田警部補に、関係者の尾行を示唆したり、杉山平太がつまづいた焼石の調査を依頼する場面。

論理性:3点

致命的な矛盾はないが、構成の甘い箇所が散見される。

意外性:2点

犯人は……しかいないでしょう。

死体偽装とアリバイトリック。わりと簡単に見破れるし、後述するように時間的にかなりきわどいと思われるのだが……。

文章・文体:3点

安定の横溝節。ただ、長編に比べて、どうしても趣の薄さが感じられる。

合計26点/40点満点。

次ページはネタバレです!

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