横溝正史『女怪』を読んだ

書評のようなもの

『女怪』というタイトルからして、怪獣みたいに巨大で容貌魁偉な女が登場するのかと思いきや、現れるのは「ほっそりと華奢でなよなよとして、どこかに頼りなげな」女性です。金田一耕助が恋心を抱いた二人の女性のうちの一人・虹子。ただし、物語は悲劇的な結末を迎えます。

本作は『オール讀物』1950年9月号に発表された短編。ちょうどストーリーが2時間の枠に嵌りやすいのか、過去に2回もテレビドラマ化されています。

評価

世界観:4点

やっぱり横溝翁のおどろおどろの作風には田舎の情景がしっくりくる。ただ山村を舞台にした作品は多々あれど、漁村というのは強いてあげれば『獄門島』以外には思いつかない。『女王蜂』や『悪霊島』も主要人物が離島に赴くが、漁村の風情は感じられないし。

ストーリー:4点

場面が小気味よく変わり、構成が引き締まっている。

人物造形:3点

虹子が幸せ薄い女性であることはわかるが、その他の登場人物は深く描かれてはいない。短編なのでやむなしというところ。

サスペンス:3点

物語の中盤で、そこまでに何が起きたのかはわかってしまう。おそらくそれは横溝翁も計算済みか。

論理性:3点

致命的な矛盾は見当たらない。そもそも事件の構図はシンプル。

意外性:4点

犯人は早い段階でわかってしまうが、最後に意外な結末が……。

トリックというほどでもないが、この殺害方法は、ヤブ医者にかかったら現在でも脳疾患で片付けられる可能性があるのでは? 司法解剖とかすれば一発アウトだが。

文章・文体:3点

安定の横溝節。『悪魔の降誕祭』よりもいい味わいを醸し出している。

合計27点/40点満点。

次ページはネタバレです!

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