横溝正史『悪魔の降誕祭』を読んだ

書評のようなもの

記事タイトルの「…分析してみた」を「…読んだ」に戻しました。やはり「分析」って、どうにもおこがましいや。

で『悪魔の降誕祭』ですが、『オール讀物』昭和33年1月号で発表された作品。その後、約3倍の長さに改稿されて角川文庫『悪魔の降誕祭』に収録されています。

大胆不敵! 金田一耕助の事務所で起こった殺人事件。被害者は、その日電話をしてきた依頼人だった。あまりのことにさすがの名探偵も唖然とするばかり。その時、12月20日であるべき日めくりのカレンダーが何者かにむしられ、12月25日になっているのに気がついた……。降誕祭パーティーの殺人を予告する悪魔のような犯人。屈辱的挑戦を受け、名探偵の激しい怒りが燃える。

この作品に関しては、まず角川文庫版の表紙絵。何を象徴しているのか、よくわかりません。絵の印象は強烈なんですが……。その一方で内容についての記憶が乏しく、kindle版を購入して読み始め、金田一が志賀葉子の死体を発見した時点で、過去に読了済みだったことをようやく思い出したくらい。

なぜそんなに印象が薄いのか、をひと言でいうと、躍動感に欠けていることが一因でしょうか。本格推理小説に躍動感を求めるのが筋違いかもしれないけど、そこそこの長さを持つ作品なのに、事件の舞台に広がりがないというか……。

具体的には、事件の発生現場が金田一の事務所兼自宅(第一の事件)と関口たまき邸(第二・第三の事件)に限られていることと、描写のほとんどが上記二箇所の現場での出来事と、そこで交わされた会話(主として関係者の供述)に費やされているからではないかと思います。

もしかすると、3倍に引き伸ばす前の短編の方が出来が良かったのかもしれません。

Wikipediaに「本作の設定と真相には、後年に刊行されたある長編作品の原形的な部分がある」と書かれているけど、その長編作品って何だろう。記憶をまさぐってみても思い当たる作品がありません。

次ページはネタバレです!

コメント

タイトルとURLをコピーしました