横溝正史『女の決闘』を読んだ

書評のようなもの

その昔、中央公論新社の『婦人公論』に連載されたという短編。女性誌ということもあってか、複雑怪奇なトリックや残虐無比な悪人、凄惨極まりない死体は出てきません。『女の決闘』という、やや猛々しいタイトルでありながら、人情味のある登場人物が多い作品です。

あらすじ

東京・緑ヶ丘住まいの英国人であるロビンソン夫妻は、諸事情で日本を離れるにあたり、交流のあった緑ヶ丘の住人を招待してお別れパーティを催した。金田一耕助も出席したそのパーティで服毒事件が発生する。
猛毒ストリキニーネが混入されたソフトクリームを口にして危うく命を落としそうになったのは、流行作家・藤本哲也の妻・多美子。彼女と並んでソフトクリームを食していたロビンソン夫人の親友・河崎泰子は無事であった。泰子は藤本の前妻であり、藤本が泰子を捨てて多美子と一緒になったという経緯もあったため、疑惑の目は泰子に向けられる。
ロビンソン夫妻が予定どおり、しかし後ろ髪を引かれる思いで日本を離れた後、今度は藤本が同様にストリキニーネで毒殺されるという事件が起きた……。

今回は特にネタバレはやりません。

そもそも、外国人夫妻とのお別れパーティという設定は必要なのか、と当初は首を傾げながら読んでいました。横溝翁の実体験か何かが題材になっているのか、あるいは版元の要請か、などと頭の中で憶測を並べていましたが、最後に至って全体を振り返ってみると、この作品を包むどこかソフトな雰囲気に、不思議なまでにフィットしているという印象。日本人の友人との別離では平々凡々過ぎて、この味は出なかったのかもしれません。

犯人の遺書なり書き置きなりで、真相が白日の下に晒されて終わり、という展開のミステリーは多々ありますが、海外との手紙のやり取りを経て解決に至り、最後は遠くから日本の友人の幸せを祈って幕切れというパターンは、自分はお目にかかったことがありません。事件を通して2人ほど死人は出ますが、読後感は爽やかでした。

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