横溝正史『トランプ台上の首』を読んだ

書評のようなもの

初出は『オール讀物』昭和32年1月号。その後、昭和34年2月に中編化された金田一耕助ものです。角川文庫版では前記事の『鴉』と同じく『幽霊座』に収録されています。

あらすじ

隅田川の水上惣菜屋・宇野宇之助が、河岸に建つアパート聚楽荘に住むストリッパー・牧野アケミの生首を発見する。しかし見つかったのは首だけで、胴体は部屋のどこにも残されていなかった。勤め先の劇場支配人・郷田や幕内主任の伊東、同僚の晴子も、生首はアケミのものと断言した。
事情聴取の過程で等々力警部ら捜査陣は、最近アケミが会社社長の稲川というパトロンを見つけたこと、アケミが何かに怯えて「殺されるかもしれない」と口走っていたこと、などを知る。
また翌日には、胴体を運び出したと思われる貸ボートが隅田川の下流で発見され、一方でパトロン稲川が、自動車のブローカー業だけではなく裏で麻薬密輸に絡んでいた、という疑いが濃厚になるなど、捜査は着々と進んでいるように思われた矢先、次の事件が起きる……。

他二編の収録作品に比べて若干分量が多く、そのおかげで完成度も頭一つ抜けているように思います。トリックもダイナミックだし、プロットや推理の過程に矛盾も見つけられませんでした(決してあら探しをしているわけじゃないのですが、気になるところは気になる性分でして……)。

次ページはネタバレです!

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