横溝正史『鴉』を読んだ

書評のようなもの

『オール讀物』昭和26年7月号に掲載された短編推理小説。角川文庫版(kindle版も)では『幽霊座』に収録されています。

あらすじ

金田一耕助は静養のために岡山県を訪れ、旧知である岡山県警の磯川警部に誘われるまま、“山にとりかこまれた猫の額ほどの一寒村”にある湯治場にやって来た。かつては〈お彦さま〉を祀る神社のご利益で栄えた湯治場だったが、今は見る影もなく寂れている。
そこで金田一は、お彦さまの神主で温泉宿の経営者でもある蓮池家の婿養子・貞之助が、3年前に起こした失踪事件の話を磯川警部から聞かされる。さらに明後日には貞之助が帰ってくるかもしれないと、浮き足立つ蓮池家の面々であったが……。

磯川警部が金田一を岡山県内のどこかに連れ出すと、大概このような展開になり、金田一にとっては静養どころか、さんざん無報酬労働を強いられる羽目になります。『悪魔の手毬唄』しかり、確か『首』もそうじゃなかったかな。ただ、僻村を舞台とした他の作品に比べて、荒寥とした感じを抱きます。

本作は短編なので、一部を除いて村の情景や村人とのやり取りがきわめて少なく、あまり僻村の雰囲気には浸れません。蓮池家とおこもり堂と地蔵崩れの崖付近の三箇所に、場面がほぼ限定されているせいか。

ヒロインは貞之助の若妻で“童女のように潔らかで美しい”珠生なのでしょうけど、私が魅力的だと思うのは、珠生の従姉妹の幾代。彼女も美しく、しかも若くて悧巧で活動的です。

それだけに犯人のクズっぷりが際立って……。

次ページはネタバレです!

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